伝えたいのに伝わらない……アメリカの大統領も悩まされ た「吃音」とは?

2021.9.20 子育て

伝えたいのに伝わらない……アメリカの大統領も悩まされ た「吃音」とは?

#教育#COCOAS



●はじめに


「あ、あっ、あ、あの……すみっ、すみません……」
 誰かに話しかける時、このように、どもってしまう人がいます。
 吃音の症状がある人たちです。皆さんもご存知の現アメリカ大統領・バイデン氏も、実は吃音の症状があります。子どもの頃は症状が重く、苦しんだそうです。
 皆さんの周りに、言葉を繰り返したり、言葉に詰まったりして話す人はいませんか? 「うちの子にも似たような傾向がある」と思うママさん・パパさんはいらっしゃいますか? 
 今回は、日本に約100万人の当事者がいるとされている「吃音」についてご紹介します。


●吃音とは何か?


吃音とは、話す時に言葉を繰り返したり、言葉に詰まったりする体質のことです。「伝えたい言葉」は思い浮かぶのに、それを声に出すことが難しいのです。
*種類
 吃音は、大きく分けて3種類あります。
① 連発
「ぼっ、ぼ、ぼ、ぼくは…」のように、繰り返して発音する
② 伸発(しんぱつ)
「ぼーくは」のように、伸ばして発音する
③ 「難発(なんぱつ)」
「……くは(ぼくは)」のように、出だしを発音できない


 *症状
ここでは、「①連発」の症状を取り上げたいと思います。
① 「『走ります』と言おう」という考えはすぐに浮かぶ
② なぜか最初の「は」を発音できない(口は開くが発声はできない)
③ 発音できても、意図せず「はっ、は、は、は、は」と繰り返す
あるいは、「は」の次の「し」がなかなか発音できない
これは、あくまでも一例です。症状には個人差があるため、「吃音」全般の症状をひとまとめにして説明することは難しいです。


●当事者の内面


 当事者は、吃音によって心が揺れます。次の4つの気持ちが生まれるからです。
① 「戸惑い」
幼い頃から、いつも周りの人がスムーズに話しているのを聞いて過ごすため、「どもらないのが普通」と考えています。どもった時、「自分は普通ではない」と感じて戸惑います。

② 「恥ずかしさ」
上手に話せないと、「恥ずかしい」と感じます。これは①と関連してきます。「普通の発声」ができないことが恥ずかしい、「普通ではないから恥ずかしい」という気持ちになるのです。

③ 「恐怖」
① と②を何度も味わうことで、「話すこと=悩みや恥を意識すること」というような感覚になり、話すこと自体が怖くなります。

④ 「焦り」
〔駅の窓口で質問する〕、〔飲食店で注文する〕など、公共の場における会話では、制限時間はありませんが、「あまり時間をかけない方がいい」という意識がはたらきます。加えて、初対面の駅員、店員などが相手となるので緊張します。そのため、二重の意味で余裕を失ってしまうのです。そんな時、恐怖を感じる「話すこと」をしなければならない……。当事者は非常に焦りを覚えます。



このように、当事者は様々な苦しみを抱えています。バイデン大統領も、吃音に苦しんだ当時、「恥ずかしさ」「不安」「怒り」を感じていたそうです。


●どう理解すれば状況が変わる?


当事者は、「吃音=悪いこと」と考えます。どもるたびに前述のような「戸惑い」や「恥ずかしさ」などを味わい、悩みが深刻化する人もいます。
 そうなった時、なりそうな時、どうすれば当事者は気持ちが和らぐのでしょうか? また、周りの人はどう接すればよいのでしょうか?
ご自身も吃音の当事者で、「吃音ドクター」として有名な医師・菊池良和さんの言葉に、そのヒントがあります。今回は2つの言葉を取り上げます。
① 「どもっても、いいんですよ」
どもるのは悪いことではないですよ。それが菊池さんの考え方です。
 吃音があっても許されるんだ……。この意識を本人と周りの人で共有することが大切なのかもしれません。

② 「少し待ってくれればいいのです」
吃音の人の話し相手に当てはまる考え方です。どもっても、声が出てくるまで待ってあげるということです。
待ってあげることで、「この人は受け止めようとしてくれる」と本人が安心するでしょう。
「吃音を受け止めてもらえる=吃音は許されることだから」と思うようになっていけば、「恥ずかしさ」も「恐怖」も「焦り」も和らいでいくはずだからです。

 話し相手になる人には、「待つ」以外の接し方もあります。どうしても忙しくて待てない、あるいは、長時間待っても本人が声を出せない場合、次の2つの方法を試してみてはいかがでしょうか?
① 筆談に切り替える
最初に「書く?」と本人に確かめてみるといいと思います。



② 質問する
本人の伝えたい内容を想像して、確認する形で質問します。①よりは難しいかもしれません。





●おわりに


 日常生活において「障害」となる場合があっても、抱えたまま生きてもいいのです。吃音を抱える本人も、その周囲の人も、どちらでもない人も、まずは「治さなきゃいけないわけではない」という思いを共有できると良いのかもしれませんね。

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