「米のとぎ汁」がシャンプーになる!?平安時代の貴族たちの髪の洗い方とは

2022.9.26 健康・美容

「米のとぎ汁」がシャンプーになる!?平安時代の貴族たちの髪の洗い方とは

#教育

髪のお手入れは、忙しいママさんにとっては、自分のためのおしゃれの時間でもあるという方もいらっしゃるかと思います。

特に髪の長い方だと、綺麗にするのに時間もかかりますよね。

髪が長いというと、昔の日本人はどうやって髪を洗っていたんでしょうか。

シャンプーって、カタカナの外来語なので、その当時に髪を洗うものがあったんでしょうか。

髪の長さが特徴の平安時代の貴族の女性たちは、実は「米のとぎ汁」を使っていたそうです!

今にも存在するものを使っていたということで、なんだか親近感も湧いてきますね。



この記事で、そんな髪の毛という身近な所から歴史について考えてみる機会をお子さんととってみてはいかがでしょうか。



1.黒髪ロングヘアは平安時代のトレンド



①平安時代の黒髪ロングヘアに関しては文献にも残っている
平安時代の髪の毛に関する文章もあるのでご紹介します。
平安時代のベストセラー『源氏物語』の有名なシーンで、若かりし頃の紫の上を初めて見て、一目惚れした主人公の光源氏が次のように心情を述べています。

「扇を広げたるがごとく末広になりぬ」

 → 現代語訳するならば、「扇を広げたようなきれいな黒髪が素晴らしい」という内容です。

 黒髪で、なおかつ床に零れ落ちるほどのロングヘアが、当時の男性貴族の目には非常に美しく映ったようです。

②平安時代の洗髪は一日がかり!?

 現代では、セミロングヘア、ショートヘアなど短い髪型も自由に選べて、長くても数時間で美容院でセットできます。

しかし、当時は、髪のコンディションを整えるのは、本人ではなく、もっぱら女房(女官:家に仕える女性たち)の役目でした。

つまり、洗髪の際には、何人もの貴族の女性にお仕えしている女官たちがつきっきりでお世話をしたのです。

 現代からはとても考えにくいことかもしれませんが「明後日、お出かけだから、美容院に行こう」と思い立っても、

 現代と違って平安時代の貴族の女性たちはすぐにはお出かけができず、貴族の女性は丸々1日かけて洗っていました。

 洗うだけでも一苦労、さらに乾かすにも一苦労、という感じですね。

 回数は諸説ありますが「年一回の洗髪だった」という説もあり、さほど頻回には洗うことができなかったようです。

一日かかっていたという当時の文献も興味のある方のためにご紹介します。

『源氏物語』(今からおよそ1,000年前)と同時期に書かれた『うつほ物語』に女一宮(おんないちのみや)という人物の洗髪の様子です。

「宮つとめてよりくるゝまで御髪すます」 (うつほ物語 蔵開・中 より)

 現代語訳 → 宮さま(皇族女性の尊称)は「朝早くから日が暮れるまで髪をお洗いになる」となります。

現代においても女性の方々の日々の苦労が偲ばれますが、当時朝から始めて、晩まで洗髪が続くというからには、平安時代の貴族の女性は、洗髪後はきっとへとへとに疲れていたに違いありませんね。

③髪は命の次に大切だった
平安時代の貴族の女性にとって、髪は命の次くらいに大切でした。

黒髪のロングヘアをそり上げるということは「俗世間での生活の一切を捨てる」という強い覚悟の現れでした。

「剃髪(ていはつ)」といって、髪を剃る時というのは、たいてい仏門修行に入るためだったそうです。

そんな大切な髪の毛なので、何人もたとえ一日、時間かかったとしても綺麗に洗っていたようです。

2.当時の洗髪の様子



あんな長い髪の毛だと、綺麗な着物が汚れないのか?と、もしかしたら不思議に思う方もいるかもしれません。

平安時代の日本のことを知ると言うことで、自分で身近なものに置き換えて体験をしてみるのも歴史を知る上で面白いアプローチかもしれませんね。


汚れないの?という上記の疑問に対しては、洗髪の時は平安時代の服装の象徴である「十二単」ではなく湯帷子(ゆかたびら)を着るということで対応していたようです。

その貴族の女性を侍女たちが湯殿にお連れするところから洗髪は始まります。

ちなみに、ここでいう「湯帷子」とは、簡単に説明すると現代の「浴衣」の原型となった衣服です。

浴衣は、元々湯あみをする為のものでしたが、時代を経て着用する意味が変化し、今のように夏の風物詩として一般に好まれるようになりました。

もし現代に置き換えるとするならば、浴衣を着て、米のとぎ汁で髪を流すというイメージです。

また「宮廷に洗髪用の米のとぎ汁を用意するための白米が用意されていた」という文献もあったため、大量のとぎ汁が必要だったのかな?ということも読み取れます。

また乾かす時も一苦労で、洗髪される貴族が台に横になり、火鉢の上で乾かしたとのことです。



火鉢ということは、現代における、遠赤外線ヒーター(もしくは開放式ストーブ)の前でゆっくりゆっくり乾かす感じでしょうか?

一年に一回しか洗えないとなると、香りの部分も気になるかもしれないので、髪に香りをつけるためにお香とともに乾かしたという文献もあるようです。

そして眠るときは、きれいにロングヘアの黒髪を巻いて箱に入れて眠っていたようです。

想像してみると、乾かす方が時間がかかりそうな気がしますね。

3.なぜ米のとぎ汁を使ったの?



①米のとぎ汁の成分について
私たちヒトの毛髪の主な構成成分は、大部分がタンパク質であり、残りは脂質、メラニン色素などです。

毛髪のタンパク質には、シスチンというアミノ酸が多く、「シスチン結合」という化学反応で結びついて、毛髪を構成しています。

米のとぎ汁には多くのビタミンやミネラルに始まり、脂質、でんぷん質、セラミドなどの天然オイルなどの髪にいい成分が豊富に含まれています。

これらの成分は、髪における新陳代謝を活発にします。

それと同時に、古い角質を吸着する働きがあるので、頭皮の汚れがすっきりと清浄されます。

米のとぎ汁は、なんと現代でいうところの「スカルプケア」のような意味合いも含んでいたのです。

さらに、セラミドの効果で、つややかに潤う髪に整います。


②現代を生きる私たちが平安時代の貴族の知識を活かすとしたら

時代は違えど、現在も存在する「米のとぎ汁」。もし当時のことを真似ながら歴史に触れてみたい、と思われる方が

昔の知恵が今に活かせるとするならば、

「シャンプーをした後に、米のとぎ汁をつけて数分待ってから洗い流す。」

という所でしょうか。

米のとぎ汁は、何も意識しないと、お米を炊くときにもったいないことに捨ててしまいがちですよね。

平安時代と現代とでは、米の栄養素や含まれる成分なども変わっているかもしれないので、一概には言えませんが、

米のとぎ汁の髪にとって良い成分が、しっとりとつやめく髪にしてくれるかもしれませんね。


まとめ


「平安時代の貴族の女性たちは、米のとぎ汁を使って髪の毛のお手入れを行っていました」という豆知識についてご説明いたしましたが、いかがでしたか?

平安時代の貴族の女性たちも、現代を生きる女性の皆様と同じように、つややかで美しい髪を求めていました。

当時の髪のお手入れで大活躍したのが、「米のとぎ汁」だったのです。

お手入れに使える用品の選択肢は異なれども、いつの時代も女性が美しくありたい気持ちは変わらないのかもしれません。

昔を知り、今に活かす、歴史を知るという面で少し何かのお役に立てましたら幸いです。

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